さよなら今世

備忘録

映像作品『レンタルファミリア』を観た話。

 映像作品の感想は全部まとめちゃうか〜などと意気込んでたけれど、当たり前にだいぶ放置しており目処が立たない為、諦めて個別に更新します。たぶん、意味わかんないタイミングで過去作感想文もあげる。とりあえず最新のから。『一人の息子』の感想は難しい。ので、いつか書こう。

 

『レンタルファミリア』

レンタルファミリア [DVD]

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崩壊した家庭環境に揺れ動く思春期の葛藤を描いた青春ドラマ。学校でいじめを受け、家庭でもトラブルを抱えている高校生の雄生と、同じく家庭に居場所がないと感じている葉月が、「理想の家族を提供する」というビジネスを始める姿を通して、家族や血のつながりとは何かを問いかける。

 本作を渋谷ユーロスペースにて鑑賞しました。8/3以降順次発売、TUTAYAなどでレンタルも開始している様。円盤をまだ受け取れていないので、初見1度観ただけの感想になります。その為いまいち認識力にかけるビミョーな感想であること前提で、どうにかお許しのほどおねがいします。当然、バレに関して遠慮なく観た人向けの感想。

 あらすじから読み取った内容とは大きく異なる方向性に傾いていった為、かなりびびるなどしました。びっくりした。しかもどうやら各販売店によってあらすじが異なっていたようです。ほーん。初期稿のあらすじをそのまま訂正しないで使ってんのかな。そして、個人的にあらすじの雰囲気から自分が想像していた作品イメージと結構異なってました。

 本作の監督は高崎翔太さん出演『心霊呪殺 死返し編』の監督でもある夏目大一朗監督。で、心霊呪殺は怪奇現象こそあれ人間の怖さを押し出していた作品となっていましたが、本作に関しても人間の怖さ、関係の歪さが描かれていて、観ていて非常に心がざわつきました。ゲロゲロ。

 本作は高崎翔太さん出演、渋谷ユーロスペースで公開中の共通点を持つ『一人の息子』と同じくして、《家族》とは何かを問う内容なのは同一。ですが、『一人の息子』が家族としての繋がりの証を"絆"や"縁"として表すならば、『レンタルファミリア』は"情"になるのかなあ。情は"愛情"にもなるし、"非情"でもあり"情け"でもある。うーん。我ながら言ったもんがちじゃねーかという喩えで恐縮ですが。

 明確にされていないキャラクター設定を語る以上、ただの主観に過ぎないながらも〜〜、なんつー前置きしちゃう様な繊細な点に触れると、高崎翔太さん演じる高木雄生君、若干自閉症の気がある様な気がしつつ観てました。話し方や行動、会話、所作が所々で拙くやけに幼かったりする点がかなりあり。*1でも割と、自宅シーンだとしっかり『思春期男性』のそれになってるから、ただ自信がなく、コミュニケーションが苦手な子? どういうキャラクターなのかな〜。と探りつつ観ていたら、まさかのトランスジェンダーな子だった。予想外だ。結構明後日の方向性に飛んだな〜〜〜。

 観ていく中で、私自身は雄生に対してトランスジェンダーを感じ取ることが出来ず。思い返すとそれらしい露骨な表現といえば、藤江れいなさん演じる五十嵐葉月ちゃんが雄生を押し倒しても雄生が興味を示さない為、女に興味ないの? と問い詰め、その後雄生に口紅を塗るシーン。いや、知り合って間もない女*2に突然自宅で押し倒された奥手陰キャ童貞は何も出来ないでしょ、っていうのもあるけど、唐突に次ぐ唐突で、色々感情の変化や場面の変化に付いて行けなかったのでした。葉月に対しての雄生の感情もよく分からなくて、まあ、感情の表現や、意思を相手に伝えることが難しいんだろうな〜なんて思っていたら、結論として彼はトランスジェンダーだった。ってことで、"そういう子です"という設定として、該当のシーンがあったっぽい? その後も化粧を施されたりしているシーンはあれど、雄生が自ら興味を持ったり手を出すシーンはないので、どちらかといえば葉月が雄生に妹や弟の立場を見いだしたかったという歪んだ認知、立場、関係性の印象を付けてたのかと思っていたんだけど。へ〜〜!? 雄生の印象付けか〜〜?! となった。それとも両者に対する意味込めてるのかな。

 雄生はトランスジェンダー(だという前提で話しますが)の割にずっと男子制服を着用していたり、口調や行動からもあまりそのような感じが読み取れず……本当に? というところが正直ある。まだ自己が確立してないだけとかじゃなく? うーん。わかんないな。マイノリティの象徴としてトランスジェンダーを設定として用いられたのかな? 専門家じゃないので、この辺りはよくわかんないしいいんですけども…。

 葉月は成長過程という意味ではなく、環境がそうさせた『大人になりかけてる女の子』、といった印象。考えている事も、行動も、大人のそれをやれる、やろうと思う、頑張って背伸びをしている女の子。ただ本当に葉月は"大人"な子ではないから、未熟な部分や考えが甘い部分があって、失敗する訳だけれども。最初に受けた印象とか、ストーカー教師、雄生と会話している印象だと、はっきり物事が言えるしっかりした子なのかな〜と思ってたけど、同級生の友達相手だとしどろもどろになっていたり、未熟な部分も垣間見えて胸が痛くなるなどした。 大人に守ってもらえない彼女には、まわりがどう見えてるのかな。あの時死にたがったのは自責の念だと思うけど、そこで雄生の父親が葉月を守ったことによって、葉月は初めて大人に守られることを知ったのかなあ。偶然、しかも最悪な場面とはいえども。

 二人の関係性、葉月はヒロインというよりも雄生と並ぶダブル主人公といった立場で良い感じだったな〜。自己が確立していない雄生を無意識のうちに葉月が管理し始めていて、優しい主従関係のようになっているように見えたので、この終わりが例えば、性自認を女だと認識した雄生が女友達として葉月と楽しそうに暮らしてるラストだともう行き止まりしかない感じで怖かったけど。*3 良い距離感で二人の自立が見てとれて、二人の関係性についてはとてもスッキリして希望のあるラストでした。最初や途中の印象からここに着地するか〜ってくらい爽やかなラストでこれまたびびる。途中のあの後どうした?とかそういう色々が謎ですけども……。あんまりそこを気にするのは野暮なのかな〜。いや気になるわ。

 登場人物全員もれなく自分勝手で自分本位。ちっとも人のことなんて考えてない。だからこそ上手くいかなかったことが、様々な人間たちの身勝手な行動の連続を経て上手くいってしまったのが皮肉だなと思いました。人間みんな身勝手で、そこに家族の関係性なんて関係ないし、知ったこっちゃないって感じですね。家族だからいっしょにいなきゃ。家族だから支えなきゃ。そんなうわべだけのことより、自分が家族とどうしたいか、どんな関係性でいたいのか、家族にどう思われたいか。生きてるうちにはっきりと自覚して発して行かなきゃ、死にたくなるだけだし虚しいし勿体ないし、ちゃんとしなきゃねっていう感じですかね。どんな感動作もどんなコメディも、本作も、現実も、そんなような気がするな。

 個人的に一番オモロだったシーン、エンディングで流れ始めるレンタルファミリア利用者の自殺志願子ちゃんが料理しはじめるとこ。なんかウケちゃって笑ったんだけど、今まで怪物だと思ってたものが本当にただただ普通で、脅威でもなんでも無かったから、自分の中で納得したし安心したんだろうなってところです。ちゃんちゃん♪

 それにしても、本人もいつだったか言っていた通り、とにかく虐げられる役所多いのは何でだろう!ここ最近、虐められるかor殺されるかみたいなところですよ。うーん。でも全部名演なので万事オッケーです。はーい。続々と公開される今後の映像作品において、高崎翔太さん(演ずるキャラクター)に与えられるポジショニングに期待!

 

*1:この辺りの高崎翔太さんの演技がかなり繊細で、上手過ぎて見ていられなくなる場面もあるので凄い、天才!

*2:本編見てる限りだとなんか突然出会う。あらすじ読んでお互い顔見知り設定なのだと知る。

*3:勿論そんなエンドも、世間的には友情的で良いものだと捉えられるかもしれないけれど